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ウェブ社会をどう生きるか
岩波新書 著者 西垣通




 ウェブ2.0について書かれた本である。ウェブ2.0でいったい何が新しいのか.どのようなことが可能なのかということを明らかにした本です。平等主義という美名のもとで、逆に、社会的な格差はますます広がっていく懸念はないのか.情報やコンピュータの本質を基礎から考え直し、社会全体として、真のIT革命実現にむけて、今どういう方策をとるべきかを問う本である。

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 近年、インターネット経由の情報が周囲にますます溢れるようになって、ウェブの影響力は増している。ボランティアで制作・維持されている「ウィキペディア」というウェブ上の百科事典は、今や最もよく利用されている百科事典の一つになりつつある。これは有名な百貨店が権威のある専門家に依頼して製作する従来の百科事典とまったく違い、ウェブ上で一般ユーザーが衆知を集めて作り上げる事典である。これはいわゆる「集合知(collective intelligence)」の代表例とされている。このように、一般ユーザーが参加し、主役として活動を始めた新たなウェブの形態をとりあえず「ウェブ2・0」と呼ぶことにする。もちろん従来のウェブ(ウェブ1.0)でも一般ユーザーがホームページを制作して広く情報を発信することは可能だったのだが、HTMLというかなり面倒な言語を使う必要があり、ほとんどの一般ユーザーは企業や官庁などのプロが作ったホームページを閲覧するだけだったのである。つまり、ウェブ2・0によって、インターネットは真の双方向メディアへの第一歩を踏み出した。

 以前、解剖学者養老孟子の「バカの壁」という本がベストセラーになつた。人間は自分の脳に入ることしか理解できない、「話せばわかる」など大嘘で、「わかっている」というのは雑多な知識がたくさんあることとは別のことだ、と書いてある。さて、そう考えると、いま日本で語られている「ウェブ礼賛論」は少々奇妙だという気がしてこないだろうか。雑多な知識などいくら羅列しても本当に「わかる」わけではない。意見など交換しても互いに「わかりあえる」とはいえない、そこには「バカの壁」がたちはだかっているんじゃないか、と切り込まれればウェブ礼賛論の基盤はたちまち崩る。とはいえ、いたるところに「バカの壁」がたちはだかっているなら、学習と会見交換といった行為自体が否定されてしまう。本書はこの矛盾を情報学的に考察するのである。

 情報が小包のような実体でないうえに、人間の心が「バカの壁」で閉ざされているとすれば、情報伝達などはできるはずがない。まさにその通りで、「そもそも情報は伝わらない」のである。にもかかわらず情報が小包のように伝達されているように見える「擬制(フィクション)」が存在するのである。この擬制は実は「メディア」と深く関連していて、ウェブ2・0も新たなメディアの一種ととらえることができる。

 情報とは、生物が周囲の環境と関係することで出現する「生命情報」である。これを人間が表現記述し社会的に流通させるのが「社会情報」であり、効率的な伝達・蓄積のために記号だけを独立させたのが、機械情報である。ウェブ社会ではこの機械情報が溢れている。

 機械情報の特徴は大量の複製・通信・記憶ができることだが、デジタルな機械情報はアナログよりも、処理能力において、桁はずれな優位性をもつ。それだから、ウェブの中には天文学的な量のデジタル機械情報が溢れかえり、情報洪水がおきるのである。

 パソコン、ブロードバンド回線、インターネットなどの急速な発達と普及によって起きている歴史的な大変革を「情報学的転回」と呼ぶことができる。ただし今おきている変革は機械情報中心な変革なので、人間らしい生命情報中心の変革にしていくのが大切である。

 ウェブ2・0という言葉を広めたのは2005年9月に発表されたティム・オライリーの「ウェブ2・0とは何か」という論文とされている。この論文では、一般ユーザーを共同開発者とみなし、衆知を集めて巨大なデータベースを構築し、パソコンではなくウェブをベースにして、具体的にはブラウザの上で多様なアプリケーション・サービスを提供しようということが書いてある。真のIT革命とは中央集権型から分権型への社会的変化である。革命後は消費者が情報発信しながら主体的に生産活動に参入していかなければならない。それをある意味でなし遂げたのがウェブ2・0なのである。

 ウェブから情報をコンピューターで検索し、それをもとに知の秩序を自動形成していくという発想は、基本的に「情報小包論」にもとづいている。要するに、情報とはあたかも煉瓦ブロックのように自在に配送できるものであり、適切な煉瓦ブロックを選択し、それらを適切なルールに基づいて組み立てていけば、有効な知識を体系的に手に入れられるということである。この発想を延長していけば、「生きる意味」さえコンピューターで検索できてしまうのではないかと思えてしまえる。しかし情報とは、決して小包のように固定された実体ではない。生きている我々が世界の意味を解釈することから、ダイナミックに立ち現れる「関係」こそが情報という存在なのである。

 米国から到来したウェブ2・0によって、IT革命は新たな局面を迎えようとしている。生産消費活動への一般人の参加がIT革命の目標だとすれば、ウェブ2・0は確かに一般ユーザーがウェブ上での活動に参加する道を開いた。しかし、著者はこの革命に対し、以下のような冷静な批判を向ける。「web2.0が直ちにみんなで作り上げる集合知を可能にし、民主的で平等な社会のベースになる、というようなウェブ礼賛論にはいささか疑問が残る点が多々ある。むしろウェブ情報検索が人々の思考能力を衰退させ、一過性的な主張に人々を同調させてしまう恐れがある。それだけではない。意気揚揚とかたられるウェブ礼賛論のなかには、善意や平等というキャッチフレーズとはうらはらに、実は多様な次元で社会的格差を広げる危険が潜んでいるのである。現代ウェブ社会は、とにかくコンピュータ処理できる明示的な知のみにとらわれ、機械情報の暴発と知恵の消滅に向かってとめどなく突進しているように思われる、いまわれわれにとって最も大切なのは、生命情報中心の情報学的転回に向けて新たな離陸を試みることなのである。」

 著者が言うようにウェブにも危険は潜んでいる。我々に必要なのは、ウェブ技術を手放しに賞賛するのではなくそれを正しく使う賢さを身につけることではないだろうか。


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Comment
11
こんばんは
>ウェブ技術を手放しに賞賛するのではなく
それを正しく使う賢さを身につけることではないだろうか。

最後に一言に感動いたしました。
シフトしている「クラウド」の意見を是非聞きたいです。

12
Re: こんばんは
コメントありがとうございます。

web2.0はちょっと古かったですね。クラウドはいずれやります。

> >ウェブ技術を手放しに賞賛するのではなく
> それを正しく使う賢さを身につけることではないだろうか。
>
> 最後に一言に感動いたしました。
> シフトしている「クラウド」の意見を是非聞きたいです。

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