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橘木俊昭著 岩波新書

日本の格差問題の要点

 日本はかつてよりも所得分配の不平等度が高まっている。特に、貧困層においては、深刻な経済状況に陥っている。日本社会において、格差が拡大した要因はいくつか考えられる。その一つに、長期不況の影響がある。日本経済は1990年あたりから最近まで15年ほど長期にわたり不景気が続いていた。その影響を受けて、失業率も上昇している。それ以前の日本の失業率は2%前後だったが、長期不況に突入して以降、一時期、5.5%と戦後二番目の高さにまで達した。失業者というのは、所得がゼロの状態にある人を意味する。従って、失業率が高くなれば貧困層も増え、格差も広がる。

 失業率には、計測の方法によって、二つの定義がある。
(1)政府が発表する公表失業率
(2)潜在失業率

 公表失業率とは過去一週間のうち、全く仕事をしておらず、かつ真剣に求職活動を行っている人を、失業者として定義して計測する。政府はこれを毎月公表している。
 
 一方潜在失業率とは、求職活動を行っても仕事が見つけられないだろうと予測し、求職活動をやめる人が対象である。

 雇用システムの変化は、格差拡大の大きな要因である。なぜなら、日本の雇用システムは、ここ数年で急激な変化を遂げており、そのことが格差拡大に大きな影響を及ぼしているからである。その大きな変化の一つは非正規雇用労働者の数がかなり増えたことである。なぜ、非正規労働者の増大が格差拡大につながるのだろうか?理由は三つある。

(1)正規労働者と非正規労働者の間には、一時間当たりの賃金に格差が存在する。非正規労働者の賃金はかなり低くなっており、統計によっても多少の違いがあるが、正規労働者の六、七割といわれている。

2)非正規労働者というのはパート労働者に見られるように、労働時間が比較的短いということが考えられる。したがって、賃金が低いうえに、一カ月間に働く労働時間が少ないので、正規労働者に比べて、総賃金の額が低くなってしまう。

(3)非正規労働者というのは雇用が不安定である。期限付き労働者や派遣労働者は雇用期間が終わったら、次の仕事が見つからない限り、失業者になり、いつでも無業者、無所得者に陥る可能性がある。このように、もともと賃金が低い上に、不安定な立場に置かれている非正規労働者が増えれば、それは格差の拡大につながる。

 近年、非正規労働者が増えたのはなぜだろうか?それには、4つの要因がある。

(1)考えられるのは、不景気による影響である。不景気になると、企業としてはなるべく労働コストを抑えたいと考えるのは当然である。したがって、賃金が低い非正規労働者を多く利用することは企業側から見れば労働コストの削減につながる。

(2)非正規労働者の多くは、社会保険制度に入っていない。このことも企業側にとってはメリットがある。失業保険、厚生年金、医療保険といった社会保険入っていない人が、非正規労働者の中にはたくさんいる。例えば、失業保険に加入するためには週当たり20時間以上働いていなければならない。また、雇用期間、雇用契約が一年以上でなければならないという条件もある。そうした条件が課されると、おのずと失業保険に入れない人の数が増えることになる。先述した非正規労働者の定義を考えれば、多くの人がそういう条件から外れるということが考えられる。その結果、非正規労働者の多くが失業保険に入れなくなってしまう。

(3)解雇が簡単にできるという非正規雇用の特徴が挙げられる。企業が事業不振に陥った際、まず、首を切りやすい非正規労働者を解雇する。そのことによって、労働コストの抑制を測るわけである。一方正規雇用の場合であれば、簡単には解雇できない。こうした面でも、企業側からすれば、非正規労働者を雇うメリットがある。

(4)特にサービス業が顕著であるが、どの企業でも時間によって忙しいときとそうでないときがある。例えばレストランでは、昼食時と夕食時が忙しく、そういう時間帯には、人手がたくさん必要となる。したがって、昼食時や夕食時にだけ働いてくれるようなパートタイマーは企業にとって好都合なのである。

 非正規雇用が増えたことについて、もう一つ論点がある。労働市場の規制緩和である。現在、労働市場において規制緩和が進められている。例えば、派遣労働者として雇える業種の種類が増えたり、派遣労働者の派遣期間に関する取り決めも、大幅に緩和された。その結果、企業が容易に、派遣労働者をはじめとする非正規労働者を雇うことができるようになった。したがって、その点をとらえて、労働市場の規制緩和が、非正規労働者の数を激増させたと指摘する人もいる。確かに労働市場の規制緩和が非関労働者を増やしたことは事実である。しかし、格差の拡大という点から考えると、労働市場の規制緩和はそれほど重要な要素ではない。労働市場の規制緩和よりも、むしろ産業における企業参入の自由化といった規制緩和の方が、格差の拡大については、重要な要因である。
 
 ここまで、非正規労働者を中心に述べた。いっぽう、正規労働者にも、新たな問題が起きており、そのことも非正規労働者が増える要因となっている。それは、サービス残業である。時間外労働に対して企業が賃金を支払わないという実態がある。サービス残業は、当然、違法行為である。サービス残業が厳しく禁止されるならば、企業は正規労働者に、その残業分について賃金を支払うことになる。あるいは、新しい人を雇って、その分の仕事を行わせることになる。従って、正規労働者にサービス残業を課すことは、新たな雇用の可能性をなくしていることにもなる。このことも、非正規労働者が減らない要因の一つである。

 個人にとっては貧困者や弱者になることは好ましくない。しかし、貧困者や弱者が増えることは、そうした個人的な問題のレベルを超えて社会にとっても大きな問題を引き起こす。それはいったい何なのか?以下で記述する。

(1)経済効率の問題である。あまりにも低い賃金に抑えられている労働者が増えたらどうなるだろうか?彼らは勤労意欲を失うだろう。働いても仕方がない。そう思う人が増えたら、日本経済の活性化にとってもマイナスの要因になる。

(2)貧困者が失業者であれば、その人は働いていないことを意味する。働いていないということは人材を有効に使用していない、あるいは人的資源を無駄にしていると言える。いわば資源のロスにつながる。

(3)治安の悪化である。貧困者や弱者は、社会から疎外されているという劣等感を持つ場合が少なくない。不幸なことに勝者を憎み、あるいは、高所得者に嫉妬を感じるかもしれない。その結果、犯罪に手を染めてしまう人も出てくるだろう。貧困者や弱者が増えることは犯罪の可能性を増やし、社会を不安定にするということである。

(4)貧困者や弱者が増えることは、逆に社会の負担を増やしてしまうという矛盾が生じる。貧困で生活できないという人に対しては、公的な経済援助を行う必要がある。従って、貧困者が増えれば、そうした経済援助負担が自動的に増えるということである。例えば、格差が増大し、生活保護を受けなければならない人が増えたとする。生活保護を支給するための財源は、国民による税負担である。自治体によっては、すでに生活保護の財源確保が厳しい自治体も現れている。従って、貧困者の数は、国民に余分な税負担を要求しないためにも、できるだけ抑えておいた方が良いのである。

(5)倫理的な問題である。豪邸に住み、消費に走るお金持ちと、みすぼらしい家に住み日々の職に困る様な貧困者が併存しているような状態がはたして人間的なのであろうか?あるいは、強者が弱者を見下すこともあり得るだろう。子供のころから、勝者、敗者が固定されていれば、そのことがいじめにもつながるかもしれない。そして、そうした子供たちが大人になってとしたら、いじめが社会的に定着する恐れがある。もちろん、どの社会にもある程度の高所得者と低所得者のへ依存というのはある、経済効率を保つためにも、ある程度の格差は容認される。しかし、それが行き過ぎた結果、今述べたような状態が起こることが、はたして人間的なのかどうか、大いに疑念を感ずる。

 私たちは自由主義経済の中に生きている。したがって、競争が有効な概念であるということは認めざるを得ない。労働者間の競争は労働者の能力と意欲を高め、企業間の競争は企業の生産性を高める。一国の経済効率も、こうした競争があってこそ高められる。しかし、競争の行きつくところでは、勝者と敗者が必ず生まれる。そして、その両者の間には格差が生じる。競争によって効率性が高められる一方で不平等が進行する、すなわち公平性が損なわれるわけである。しかし、結果の平等・不平等とは別の視点から見た場合、効率性と公平性のトレードオフに関して別の結論が導かれてくる。
 
 すなわち、それは、機会の平等・不平等からの視点である。機会の平等・不平等というのは人々が教育をうける、職業に就く企業で昇進するといった際に問題となる。公平性が高いということは、機会の平等が保たれていると理解できる。機会の平等がない社会では、誰もが競争に参加できない。有能な人、がんばれそうな人を競争に取り込まないという懸念が生じる。そのような人が、教育を受けられなかったり、職業に着けなかったり、仕事をさせてもらえなかったり、昇進できなかったりといった具合に、そもそも競争に参加できずに、力を発揮することができないとしたら、これは経済効率の面からみてもマイナスとなる。なぜなら、本来は経済効率を高めるのに貢献するだろう人が、排除されているからである。このように、機会の平等・不平等の視点から効率性と公平性を検証すると、機会の平等性が達成されることが、むしろ経済の効率性を高めると結論付けられる。従って、機会の平等・不平等から公平性を理解した場合は、効率性と公平性はトレードオフの関係にはないと解釈できる。むしろ、公平性を増すことによって、効率性も増すと解釈できる。

続きます。


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